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生涯学習概論 レポート(合格)

生涯学習概論についても、出して1日で添削が帰ってきました。
年度初めということもあるのか、素晴らしい速度ですね。

以下、合格レポートです。


1.ポール・ラングランが提唱した生涯教育理論について
 生涯教育という考え方の源流は1789年のフランス革命時代と考えられているが、生涯教育論が初めて世界的に注目されたのは、1965年にパリのユネスコで開催された成人教育推進国際委員会においてであった。この会議においてポール・ラングランが提出した「生涯教育について」と題するワーキングペーパーが契機となり、生涯教育という考え方は世界的に議論を巻き起こすことになった。
 ポール・ラングランは、生涯教育の意義を「教育の年齢・教育方法・教育内容などの統一・統合にある」と述べている[1]。これは、児童期・青年期に受ける学校教育、家庭で受ける家庭教育、職場やコミュニティ等で受ける社会教育を個別のものとして捉えるのではなく、生涯に渡り教育を受けられるように、全体的なものとして捉えるということである。
 ポール・ラングランは、生涯教育が必要になる理由の第一に「現代社会の激しい変化」をあげている[2]。世界的な戦争が終結し、世界が拡大傾向に入った1960年代は、科学技術の進歩や人口増加により社会が加速度的に変化する時代であった。社会の変化に伴い起こり得る様々な課題に対応するためには、今現在起きていることを理解し、解決策を見出していく能力が必要となる。このような社会情勢の中では、教育は決して若いうちにのみ受ければ良いものではなく、生涯に渡り学び続けることが重要になる。ポール・ラングランが提唱した生涯教育論は、このような時代背景のもとにおいて生まれたものであった。
 ただし、ポール・ラングランの生涯教育論は、ヨーロッパや先進国を中心としたものであり、また論理的には優れていたが理念的すぎたために批判も多く、その後のリカレント教育やジェルピの生涯教育論により補完され、発展が図られることになった。

2.ポール・ラングランの生涯教育理論が我が国の施策に及ぼした影響について
 ポール・ラングランの生涯教育論は、1967年に波多野完治氏により翻訳され、日本に紹介された。当時、日本は高度経済成長時代であったが、一方で経済発展の代償として公害問題や自然破壊問題、コミュニティの破壊による社会的な歪みなどの様々な問題が認識され始めた時代でもあった。そのような時代背景において、生涯教育論は産業界をはじめとして注目をあつめることになり、当時の文部省の審議会である中央教育審議会、社会教育審議会でも検討がなされた。しかし、両審議会が発表した答申によって示された生涯教育の理念は、オイルショックによる不況下において、理念よりも実務を必要としていた産業界にすぐに受け入れられることはなく、あくまで教育改革の方向性を示すもの以上にはならなかった。
 日本における生涯教育の施策が具体的したのは、その後1981年に中央教育審議会から発表された「生涯教育について」という答申によるところが大きい。この答申では、生涯教育を具体的に実現させる方策として、生涯教育の仕組みが課題である、と示している[3]。さらに、生涯教育が必要とされる背景、生涯教育と生涯学習の明確な定義や生涯教育の各段階の明確化を実施し、生涯教育施策の大きな推進力となった。政府は、この中央教育審議会の答申をベースとして具体的な施策を検討するために、内閣総理大臣の諮問機関として臨時教育審議会を設置した。臨時教育審議会では、教育の改革をテーマとして生涯学習体系への移行を進めるための具体策について検討を実施し、計4回の答申をまとめた。政府は、臨時教育審議会の答申の趣旨を実現するために、1987年に教育改革推進大綱を閣議決定した。教育改革推進大綱により、文部省は新たに生涯学習局を設置し、生涯学習に関する行政を担当させることにした。また、1990年には生涯学習振興法が成立し、生涯学習の振興のための都道府県の役割や地域の生涯学習基本構想、及び生涯学習審議会が定義された。都道府県は、同法を根拠に生涯学習推進センターの設置や生涯学習の普及啓発、住民への学習機会の提供といった行政サービスを実施することになった。
3.まとめ ポール・ラングランの提言により、変化する社会に対応するための生涯教育が理念として明確化され、日本においてはその理念に基づき各審議会の答申、教育改革推進大綱の閣議決定生涯学習振興法の成立がなされ、現在でも生涯学習に関する行政サービスが実施されている。社会の変化はポール・ラングランの時代よりもさらに加速しており、今後もより生涯学習の役割は重要になってくるのだと予想される。「生涯教育」ではなく、「生涯学習」という言葉が示す通り、生涯学習はひとりひとりの意識が重要なものであり、現代においてどのような生涯学習が必要であるのかは、私達一人ひとりが考えていくべきものであるのではないか。

<参考文献>
[1] 坂井 暉「生涯学習概論」近畿大学情報教育部, 2014, P9
[2] 坂井 暉「生涯学習概論」近畿大学情報教育部, 2014, P12
[3] 坂井 暉「生涯学習概論」近畿大学情報教育部, 2014, P26


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生涯学習概論のレポート作成にあたり参考になる文献はこのあたりでしょうか。ただ、この科目のレポートは大学のテキストをじっくり読み込めばある程度作成できるのではないかと思います。

生涯学習概論―生涯学習社会への道

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生涯学習概論 第1次改訂版

生涯学習概論 第1次改訂版


図書館概論に引き続き早期に返却されたレポートです。講評でも良い評価をもらうことができました。
生涯学習の歴史について俯瞰的に学ぶことができるとても良い設題だと思います。
学習してみて感じたのは、生涯学習概論を最初に勉強しておくと、その後の各科目の学習の理解が進みやすいということです。
生涯学習というキーワードは図書館において重要であり、なぜ住民にサービスを提供しなければならないのかという根本的な理解に繋がると思います。
個人的には、図書館概論よりも先に学習しても良いかなという気がしました。

zbtn.hatenablog.com



以上、生涯学習概論のレポートでした。
本記事が参考になりましたら幸いです。司書資格取得に向けてがんばってください!