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日本にはどのような図書館があるか。図書館の種類について

近畿大学からテキストが届いたので、さっそっく図書館概論から読み進めてみました。
図書館概論の学習内容は、図書館の定義に始まり、図書館の種類ごとの設立趣旨や課題点等の整理についてといったところでしたが、その中でも私が特に面白いと思ったのは図書館の分類ごとの役割についてでした。
日本にはどのような図書館が設置されており、それぞれどのような役割があるか、感覚的には理解しているつもりでも、体系的に理解はできてはいなかったのを感じます。
ということで、日本に設置されている図書館の種類 及び その役割について以下に整理してみました。

 

図書館の分類方法

図書館の分類方法には、設置主体別 及び 利用者別の分類方法があります。設置主体別の分類では、図書館を設置者(国立・公立・私立)別に整理する考え方ですが、この分類だと例えば国会図書館と国立大学図書館は同じ分類となってしまい、実態に即していません。そこで、図書館の分類は多くの場合は利用者別に行います。

利用者別に図書館を分類すると、以下のように整理されます。
 

利用対象者 館種
全国民、国会議員 国立図書館 国立国会図書館
一般市民 公共図書館 県立図書館、市立図書館
小・中・高等学校の児童・生徒 学校図書館 小・中・高等学校図書館
大学・短大の学生及び教職員 大学図書館 国立大学図書館、私立大学図書館
企業・団体 専門図書館 企業図書館、学会図書館
視覚障害者、入院患者等 その他の図書館 点字図書館、病院患者図書館


利用者が異なれば、当然図書館が提供するべきサービスも異なるわけなので、上記の分類は図書館の実体を整理するのに適していると思います。
それでは、各図書館にはどのような特徴があるのでしょうか。

国立図書館

国立図書館は、国によって設立された図書館であり、以下の役割を担うものであるとされます。

  • 国内の出版物の網羅的な収集、保存
  • 全国書誌の作成

ここで、全国書誌とは、収集した出版物のリストのことです。全国書誌には署名、著者名、出版社等の情報を記述します。これらの情報を整理することで、出版物の網羅的な管理・把握を可能とすることが全国書誌を作成する目的です。

世界の国立図書館には、例えばアメリカ議会図書館やイギリス大英図書館等がありますが、日本おいては国立国会図書館が上記の役割を担っています。
国立国会図書館は、国会・行政・司法に対してサービスを行っており、例えば国会議員の立法活動の補佐として、関連資料の収集・分析・報告、法律案の起草や評価等の業務を行っています。

国立国会図書館は、もちろん国民も利用することができます。

公共図書館

公共図書館は、一般住民が利用するための図書館です。日本では都道府県が設立する「都道府県立図書館」と、市町村が設立する「市町村立図書館」とが、お互いに補完し合いながら住民向けサービスを提供しています。

住民が最も身近に利用することができる図書館は市町村立図書館になると思います。しかし、市町村の予算では提供するサービスに限界がありますし、規模の小さい自治体では市町村に図書館を設立することが難しいケースもあります。そこで、都道府県立図書館は中央図書館として市町村立図書館と連携して住民サービスを充実させるという役割があります。

公共図書館では、図書の収集・貸出やレファレンスサービスに加えて、絵本の読み聞かせ等の児童向けサービスや生涯学習の支援を行っています。公共図書館は、幼児~老人まですべてが利用できる、生涯学習の拠点として期待されている面もあります。

しかし、現在のインターネット社会においては、公共図書館が担うべき役割が曖昧になっていると言えます。近年では、業務委託や指定管理者制度の導入が進んでおり、自治体サービスの中でもコストカットの対象となっています。

公共図書館はなんのために設置されるのか」「企業が提供する貸本サービスとの違いは何か(行政が税金を利用して図書館を設置するメリットは何か)」という国民からの問いに答えていくことが、公共図書館が生き残っていく道なのではないかと思います。

大学図書館

大学図書館は、各大学が教育・研究活動に利用するための図書・資料を収集・保存することを目的として設置されています。大学図書館を設置する法的根拠は大学設置基準にあり、大学の設立にあたって大学図書館の設置は必須となっています。

大学図書館の大きな役割に、学術情報の収集・提供があります。ここで言う学術情報とは、たとえば学会発表論文や大学が作成するジャーナル等のことです。現在では、学術情報の管理はシステム化・ネットワーク化が進んでいます。学術情報管理のシステム化には、NII(国立情報学研究所)が大きな役割を果たしています。NIIは、学術情報の目録DBとしてNACSIS-CAT/NACSIS-ILLを提供しており、同サービスにて学術情報の所在地を各図書館横断で検索することができます。

大学図書館高等教育・研究活動に必須の機関ですが、一方で近年の少子化や大学の乱立に伴う大学経営状況の悪化により、図書館の予算も削減傾向にあります。収集する図書や研究論文雑誌の削減も進んでおり、学生や教職員向けのサービス低下も懸念されています。

学校図書館

学校図書館は、学校教育の一環として小・中・高等学校に設置される図書館です。ほぼ100%の学校に図書館が設置されており、児童・生徒の教育支援を行っています。

学校図書館は、児童・生徒が最も身近に利用できる図書館としての価値を提供しています。学校図書館は児童・生徒へ向けて図書の貸出を行うことは勿論、児童・生徒向けのレファレンス活動を行う機能、もしくは学校の刊行物等の学校の資料を蓄積するための機能としても期待されています。

学校図書館の課題として、学校図書館に専門職である司書教諭資格の取得者が少なく、また多くの司書担当教員は兼務となっており専門的に図書館の活用に取り組むことができていないという点があります。

個人的には学校図書館は子供時代において読書体験を提供してくれる貴重な場所だと思うので、ぜひとも人材リソース・予算を増やして欲しいところだと思います。

専門図書館

その他、会社や学会等、あるコミュニティで独自に設置している図書館を、専門図書館と整理するようです。私の勤務先にも、業務上必要になる資料や雑誌、論文等を集めた私設図書館がありますが、あまり利用している人は多くないですね。仕事柄省庁が作成する報告書や論文等を調べることが多いのですが、現在はインターネット上で多くの情報が手に入ってしまうこともあるのでしょう。

 

図書館の種類とそれぞれの役割の整理は以上です。これでもだいぶ端折ったほうだと思います。実際には、まだまだ書ききれないくらいに図書館の役割は存在しています。

ただ、学習しながら感じたのは、「理念・理想としての図書館の役割」と「利用者が求める図書館サービス」に乖離が発生している可能性はないか、ということです。特に、公共図書館学校図書館については、利用者の身近な場所にありサービスを提供するということが第一義なのだと思いますが、図書館が図書を貸し出すためだけの役割を担うのであれば、インターネットや物流が発達し物理的な距離の重要度が限りなく低下しているこの社会において、どこまでの価値を提供できるでしょうか。

利用者が図書館に図書の貸出機能だけを期待しているのだとすれば、多額のコストを掛けて図書館を維持する国民や住民の理解を得るのは難しいかもしれません。


国民や住民が期待する図書館の役割とはなんなのか、もう少し自分なりに考えてみる必要があるような気がしました。